SPECIMEN LABELNo.075
- 対象の法人格
- 特例有限会社(株式会社として存続)
- 根拠法
- 会社法/会社法整備法 第1条〜第3条・第17条・第18条・第45条・第46条ほか
- 所管
- 商業登記は本店所在地を管轄する法務局
- 設立の方式
- 有限会社の新規設立は不可。既存会社は特例有限会社として存続し、通常の株式会社への移行制度あり
今から有限会社を設立できるか|特例有限会社の位置づけ

この記事が役に立つ人
- 新しい法人設立で有限会社を候補にしている人
- 家族等が営む有限会社の引継ぎを考える人
- 特例有限会社と通常の株式会社の違いを整理したい人
「小さな会社なので有限会社にしたい」と考えても、現在は有限会社を新しく設立することはできません。今も見かける有限会社は、旧制度で設立された会社が特例有限会社として存続しているものです。新規の法人設立と、既存会社の引継ぎや移行を最初に分けて考える必要があります。
2026年10月12日に確認した会社法整備法と法務省・法務局の案内に沿って、有限会社の法人格の位置づけを整理します。名称に「有限会社」が残っていても、法律上は特則のある株式会社です。登記の様式に「設立」「解散」という文字がある場合も、その手続きが新しい別会社を作る意味かどうかを確認してください。
01有限会社の新設はできないが、既存会社は存続する

会社法整備法第1条は有限会社法を廃止し、第2条は施行時に存在した有限会社が会社法上の株式会社として存続することを定めています。これが現在の特例有限会社の基礎です。新しい法人設立の形態として有限会社を選ぶことと、すでにある有限会社が事業を続けることは、制度上別の問題になります。
町の看板や契約書に有限会社という名称があるのは、違法な形態が残されているからではありません。法律が既存会社の継続を認め、その商号に有限会社の文字を用いることを求めています。名前だけを見て、もう存在しない法人格で営業していると判断しないでください。
一方、新規の法人設立では、会社法が定める株式会社、合名会社、合資会社、合同会社などから目的に合う形態を検討します。有限会社を小規模事業の一般名称として使っていると、相談先と話が食い違うことがあります。新しく会社を作りたいのか、既存の有限会社を引き継ぎたいのかを明確に伝えましょう。
旧制度の書籍や古いウェブ記事には、有限会社の設立に必要だった資本や人数、定款の認証などの説明が載っています。しかし、その説明を現在の法人設立の手順として使うことはできません。資料の日付だけでなく、どの制度の時点を扱うものかを確かめる習慣が大切です。
今の選択肢を確認する順序
新規設立なら現在の会社形態を比較します。既存有限会社があるなら、その会社を続けるか、承継するか、通常の株式会社へ移行するかという別の検討になります。
出典会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
02特例有限会社は、株式会社の特則として理解する

会社法整備法第2条は、旧有限会社の定款、社員、持分、出資一口を、それぞれ株式会社の定款、株主、株式、一株とみなすことを定めています。以前の文書にある用語がそのまま残っていることがありますが、現在の法律上の関係は特則を含む株式会社として確認します。
この「社員」は、雇用されて働く従業員の意味とは異なります。古い有限会社の定款や名簿を読む際に、社員を従業員全員のことだと解釈すると、出資者や議決権の把握を誤ることがあります。法人格の沿革を理解し、当時の持分が現在の株式へどう対応するかを調べます。
特例有限会社は、通常の株式会社とまったく同じ規律がすべて適用されるわけではありません。商号、機関、役員の任期、公告などに特則があります。法人設立の候補として通常の株式会社を調べた説明を、そのまま既存の有限会社の運営へ当てはめないようにしてください。
反対に、特例があるから会社法とは無関係に運営できるという意味でもありません。個別の判断では、会社法の原則と整備法による変更点、実際の定款を合わせて確認する必要があります。手続きの案内を探す際は、対象が特例有限会社と明記されているかを見ると取り違えを減らせます。
事業承継の準備では、現在の登記事項証明書だけでなく定款、株主に関する記録、過去の変更書類も整理します。法人設立時から代表者が同じでも、持分や株式の譲渡、相続、資本の変化があったかもしれません。書類が見当たらないところは事実関係を確認し、推測で名簿を作り直さないことが重要です。
出典会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
03商号を「有限会社」にすれば新設できるわけではない

特例有限会社の商号には、会社法整備法第3条によって有限会社の文字を用います。これは既存会社の法的な位置づけに対応する決まりです。通常の株式会社や合同会社の法人設立で、昔から親しみがあるという理由だけで有限会社を会社種類の表示として選べるわけではありません。
屋号やブランド名と、登記する商号も区別します。看板やサービスの呼び名が短く表記される場面でも、契約する法人を特定するときには正式な商号等を用います。法人格の種類を誤認させる表示は避け、取引先が誰と契約するのかを確認できる状態にしてください。
既存の有限会社を引き継ぐ場合、商号に長年の知名度があることは検討材料になります。ただし、その名称を使うことと、会社の事業や責任を承継することは同じではありません。商号、商標、店舗の呼称などの権利や使用関係を分けて調べ、何を引き継ぐ計画かを明確にします。
通常の株式会社へ移行しても、ブランドや店舗の名前を維持したい場合があります。その場合も、正式な法人名の変更を契約先や利用者へどう知らせるかを考える必要があります。法人設立時に考える名称の問題とは異なり、既存の文書や取引に新旧の表記が混在する期間の管理が課題になります。
古い請求書や銀行の登録名だけを見て現在の会社種類を判断せず、登記と社内の記録を確認します。会社名の変更があったのに社内様式だけが以前のままということもあり得ます。手続きの準備では、現在有効な情報と更新されていない表示を区別することから始めてください。
出典会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
04特例を維持する場合の機関と運営を確認する

特例有限会社には、通常の株式会社の取締役や監査役の法定任期に関する規定が適用されない特則があります。これが維持を検討する理由の一つになる場合がありますが、役員に関する手続きがすべて不要という意味ではありません。退任や就任等の変更があれば、実際に必要となる決議や登記を確認します。
会社法整備法第17条の機関に関する特則にも注意します。特例有限会社では、通常の株式会社と同じように取締役会等を自由に設置できるわけではありません。法人格の仕組みを変えずに新しい監督体制を作れるか、希望する機関に対応できるかは、具体的に検討する必要があります。
計算書類の公告等に関する規定にも適用除外があります。ただし、公告の特則と、日々の会計記録や計算書類の作成、税務上の義務は別です。「有限会社なら決算事務がなくなる」という理解は誤りです。本稿では法人設立の制度選択を扱うため、税務の申告や設立後の一般的な届出の詳細には踏み込みません。
小規模な家族経営であっても、株主と役員の役割を整理します。株式を持つ人が全員現場で働くとは限らず、現場をまとめる人が株式を持つとも限りません。法人格を継続する以上、その会社のルールで誰がどの決定を行うかを明確にすることが必要です。
新しい法人設立と比べて事務が少ないかどうかは、実際の会社の状態にも左右されます。過去の役員変更や本店移転等が適切に反映されていなければ、まず記録を整える仕事が必要になります。特例の便利さだけで判断せず、現在の運営と書類が一致しているかを確認してください。
出典会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
05通常の株式会社への移行は、単なる看板の変更ではない

特例有限会社は、定款を変更し、商号に株式会社の文字を用いる通常の株式会社へ移行できます。会社法整備法第45条・第46条に対応する制度です。看板や名刺を変えるだけで法人格の取扱いが変わるわけではなく、株主総会での定款変更と移行の登記が関係します。
法務局のFAQでは、特例有限会社についての移行による解散登記と、商号変更後の株式会社についての設立登記を同時に申請することが案内されています。ここに「設立」とあるからといって、ゼロから別の法人設立を行い、事業を移す場合と同じに扱わないでください。
整備法の仕組みは、存続している株式会社に適用される特例を外して通常の株式会社へ移行するものです。別会社へ財産を売り渡す計画とは前提が違います。ただし、契約先への名称変更の通知や行政上の届出等が不要になるわけではないため、関係する制度や契約を別途確認します。
法第46条は、該当する株主総会の決議から2週間以内に本店所在地で移行の登記をすることを定めています。具体的な決議内容や登記書類は、採用する機関の構成によっても確認が必要です。法人設立用の一般的なひな形へ会社名を入れるだけで処理しないようにしましょう。

出典よくある質問等〈商業・法人登記関係〉(法務局・確認日 2026年10月12日)
06移行後の役員任期と、戻せない選択を点検する

通常の株式会社へ移行する際には、移行後の役員の任期を確認します。法務省の案内では、商号変更前に選任された役員について、会社法の任期の規定が適用され、以前の選任日から起算することが説明されています。移行の時点で任期が満了する場合があるため、選任の記録が重要になります。
長年代表者が変わっていなければ、就任時期をすぐに確認できないこともあります。登記事項と議事録、定款の定めを照らし、必要な選任の手続きを見落とさないようにします。「株式会社へ変えるのだから役員も自動的に新しく就任する」という理解は避けてください。
移行後に取締役会を置くかどうかなど、機関設計も考えます。会議を増やすこと自体を目的にせず、事業の規模、役員の人数、監督の仕組みに合うかを検討します。法人設立の初期費用だけを比較するのではなく、移行後に継続して行う事務の負担を見積もることが必要です。
通常の株式会社となった後に、新しく特例有限会社の地位を取得する制度はありません。特例有限会社は旧有限会社の存続を前提としたものだからです。移行を一時的な名称変更のように考えず、失われる特例と得たい経営上の効果を整理し、株主等で判断してください。
特例有限会社には、吸収合併の存続会社や吸収分割の承継会社となれないなどの制限もあります。将来の再編計画により通常の株式会社への移行を検討する場合は、その順序を含めて確認します。現在の事業に不都合がないことと、予定する再編を実行できることは別の判断になります。

出典会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&A(法務省・確認日 2026年10月12日)
07既存会社の引継ぎは、新規の法人設立と別に調べる

有限会社を新設できないことから、既存の特例有限会社を譲り受けることを考える場合があります。しかし、既存会社の株式を取得することは、名前だけを利用して新しい法人設立をすることではありません。会社自体が存続する以上、過去の契約や債務、紛争、財産などを確認することが不可欠です。
登記に記載される情報だけで、会社の状態をすべて把握できるわけではありません。帳簿、契約書、借入れ、担保や保証、従業員との関係、許認可の状況など、事業に応じた調査が必要です。長年休んでいた会社だから負担がないという前提で進めないようにします。
株式の譲渡には、特例有限会社の譲渡制限に関する特則も確認します。株主である人が譲り受ける場合と、それ以外の人が取得する場合の扱いを区別し、現在の株主を確定した上で手続きを進めます。法人格の取得方法として単純化せず、会社の支配や運営を引き継ぐ取引として検討してください。
会社そのものを引き継ぐのか、店舗や設備などの事業資産だけを受け取るのかでも、計画は変わります。後者なら、受け皿として新たな法人設立を行う場合もあります。どちらの方法が自分たちの目的に合うかを、引き継ぐ契約や負担、必要な同意や許認可を踏まえて比較します。
相談時には「有限会社を買いたい」だけでなく、なぜその会社が必要なのかを説明できるようにします。既存の顧客関係や設備を引き継ぎたいのか、特例を維持したいのか、名称を使いたいのかで確認事項が異なります。法人設立の代わりとして気軽に選ばず、既存会社の状態を理解して判断することが大切です。
家族内の承継でも、口頭の了解だけで株主や代表者が確定するわけではありません。複数の相続人や以前の出資者が関係する場合は、誰が何の権利を持つのかを資料で確かめます。引継ぎを急ぐ事情があるときほど、曖昧な名簿や権限をそのままにしないでください。
引継ぎ後に業種を変える予定がある場合は、会社の目的や許認可、既存契約の条件を確認します。前の経営者ができた事業を、新しい経営者が同じ条件で続けられるとは限りません。必要な資格者や設備を維持できるか、変更の手続きが何かを、契約先や担当行政機関に具体的に確認してください。
調査の結果、残す必要のある事業と不要な契約が分かれたときは、誰がいつ整理するかを合意しておきます。法人を引き継いだ後に相手方が対応してくれるという期待だけでは、負担の所在が不明確になります。確認済みの事項と未解決の事項を分けて判断することが大切です。
出典会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
08まとめ|新設、継続、移行、承継を分けて判断する

有限会社の新規の法人設立はできませんが、既存の会社は特例有限会社として存続できます。その法人格は株式会社としての存続と特則に基づくものであり、商号の表示だけから運営のルールを推測しないことが大切です。現在の定款と株主、役員、事業の記録を確認します。
これから作る法人格を選ぶ場合は、法人格の種類一覧で現行の制度を確認してください。通常の株式会社への移行や既存会社の承継は、新規の法人設立とは違う手続きと確認が必要です。自分の相談がどれに当たるかを最初に分けましょう。
既存の有限会社があるなら、特例を維持する理由と移行したい理由を、将来の事業計画に照らして整理します。制度の名称だけで決めず、引き継ぐ権利義務と成立後の運営を見通して選ぶことが、無理のない判断につながります。
新しく会社を作る話なのか、今ある会社を変える話なのかを一文にしてみてください。その区別ができると、調べるべき法律と書類、相談する内容がはっきりします。
出典会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
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