本文へ移動
法人設立 農業
分類 015医療・農業・認可

CATEGORY / 分類

法人設立 農業|農業法人の設立方法と農地所有適格法人の要件を法人格から整理する

収めた記事 1 本法人格の種類の一覧に戻る

この記事を読んでほしい人

  • 家族経営や集落営農を一つの法人にまとめたいと考え、農業法人の設立方法を調べ始めた人
  • 会社として農業に参入したいが、農地を買えるのか借りるだけなのか、先に切り分けたい人
  • 農事組合法人と株式会社のどちらが自分たちの営農に合うのか、法人格の違いから確かめたい人

「農業法人をつくりたい」という相談では、最初に何の法人格を指しているのかを聞き返す場面がよくあります。農業法人という名前の法人格は法律にありません。農業協同組合法に基づく農事組合法人もあれば、会社法に基づく株式会社や合同会社で農業を営む法人もあり、それらをまとめた呼び名にすぎないからです。

この記事は、農業の法人設立を考える人が最初に知りたい全体像を一枚にまとめたものです。農事組合法人の設立の手続き、会社形態との位置づけ、農地を所有するための農地所有適格法人の要件、農地を借りるだけで参入する道筋を順に確かめます。細かな論点は子記事に任せ、ここでは判断の順番をつかむことを目標にしました。内容は2026年10月23日までに確認した法令と農林水産省の資料に基づいています。

標本 Ⅰ農業法人は法人格の名前ではない|まず呼び方をほどく

農業法人は、法人格の総称

法人設立の窓口で「農業法人にしたい」と伝えても、登記できる法人格は決まりません。法務局が受け付けるのは株式会社、合同会社、農事組合法人といった個別の法人格だからです。農業法人は、それらのうち農業を営むものをひとまとめにした通称だと考えると、混乱が減ります。

法人格が違えば、根拠となる法律も違います。農事組合法人は農業協同組合法、株式会社と合同会社は会社法です。農林水産省の農事組合法人の案内ページも、農事組合法人を設立する人に向けて制度の概要と手続きを示しており、会社形態とは別の制度として扱っています。農地の取引は、どの法人格を選んでも農地法の規制を受けます。

整理のしかたとして、次の三つを別々の問いにしておくと話が進みます。ひとつは、どの法人格で成立させるか。もうひとつは、農業のどこまでを法人の事業にするか。最後のひとつは、使う農地を所有するのか借りるのかです。三つ目は法人格の選び方とは切り離して、あとの見出しで扱います。

この記事の読み方

農業法人という言葉に出会ったら、法人格・事業の範囲・農地の権利の三つのどれの話なのかを書き分けて読んでください。

詳しい比較は農事組合法人と会社形態の農業法人の選び方にまとめています。なお、この図鑑は株式会社の作り方や合同会社の作り方そのものを扱いません。会社形態を選んだあとの設立の流れは、各担当の姉妹サイトのテーマになります。

出典農事組合法人の制度(農林水産省・確認日 2026年10月12日)

標本 Ⅱ農事組合法人の法人設立|農民3人の発起人から登記・届出まで

発起人3人から、登記と行政庁への届出まで

農業の法人設立でよく検索されるのが、農事組合法人の設立の手続きです。農業協同組合法第72条の32は、農事組合法人を設立するには3人以上の農民が発起人となることを必要とし、発起人は共同して定款を作成し、役員を選任し、そのほか設立に必要な行為をしなければならないと定めています。

農事組合法人を設立するには、三人以上の農民が発起人となることを必要とする。

設立の方式は準則主義で、所轄庁の認証や認可を待つ形ではありません。登記をして成立したあとに、同条第3項に従って、成立の日から2週間以内に、登記事項証明書と定款を添えて行政庁へ届け出ます。農林水産省のよくある質問も、登記で法人格を得たあとに行政庁へ設立した旨を届け出る流れを示しています。届出先は、組合の地区の範囲で異なるため、農林水産省のページで確認します。

農事組合法人の設立の流れを示すタイムライン
図:農事組合法人の設立の流れを示すタイムライン

理事を置くことは必須で、監事は定款の定めにより置くことができる任意の機関です。農事組合法人の理事は組合員でなければならず、監事とは兼ねられません。人数のルールは会社より簡単に見えますが、組合員が3人未満になった日から6か月間3人以上にならないと解散する、という定めもあります。法人をつくる段階で、人が減ったときの備えまで話し合っておくと安心です。

実際の設立では、出資の割合、組合員の資格、事業の範囲を定款にどう書くかが争点になります。都道府県の農業担当課が設立の事前相談を受けていることが多いので、定款の案ができた段階で一度相談してください。

出典農業協同組合法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅲ農事組合法人にできる事業|共同利用と農業経営は線が引かれている

共同利用の組合と、農業経営の組合は別物
共同利用の組合と、農業経営の組合は別物

農事組合法人は何でも営める法人格ではありません。農業協同組合法第72条の10第1項は、行える事業を、農業に係る共同利用施設の設置や農作業の共同化に関する事業、農業の経営、それらに附帯する事業の三つに限っています。法人設立の前に、自分たちの営農がどれに当たるかを確かめる必要があります。

共同利用施設・農作業の共同化
乾燥調製施設や農業機械を共同で持ち、組合員の作業を共同化する事業。農業を組合が自ら営む形ではない
農業の経営
組合が土地を使って作物を作り、売る事業。実務では農業経営を行う農事組合法人と呼ばれ、組合員は組合の事業に従事する
附帯する事業
前の二つに付随する事業。農畜産物を原料にした製造・加工などの関連事業は、農業の経営に含まれる範囲が省令で定められている

組合員に出資をさせない非出資農事組合法人は、同条第2項により農業の経営をする事業を行えません。農業を組合として営みたいなら、出資する組合員で組む必要があります。農業の経営をする農事組合法人では、事業に常時従事する者のうち組合員と同一世帯の人以外は、従事者の3分の2を超えてはならないとする第72条の12の定めもあります。

組合員の資格は第72条の13で、農民のほか、農地中間管理機構などが挙げられています。議決権は第72条の14により、出資額に関係なく各組合員が1個ずつ持ちます。会社のように出資額で議決権が決まるわけではない点が、会社形態との大きな違いです。

剰余金の配当は第72条の31で、利用分量や従事分量に応じて行うほか、年8分以内の出資額に応じた配当もできると定められています。農事組合法人の法人設立から運営までの仕組みは、農林水産省の農協・農事組合法人のページでも確認できます。

出典農協・農事組合法人(農林水産省・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅳ会社形態を選ぶとき|農事組合法人と並べた位置づけ

農事組合法人・株式会社・合同会社を同じ物差しで
農事組合法人・株式会社・合同会社を同じ物差しで

農業を会社として営む道もあります。株式会社や合同会社で農業を行う場合、会社法に沿った法人設立の手続きがそのまま必要です。このカテゴリーでは、会社の作り方や資本金には踏み込まず、農事組合法人と並べたときの位置づけだけを示します。株式会社の設立は姉妹サイト(株式会社・資本金)、合同会社の設立は姉妹サイト(合同会社)の担当です。

農事組合法人・株式会社・合同会社の人数・財産・方式・分配・税制・所管の比較
図:農事組合法人・株式会社・合同会社の人数・財産・方式・分配・税制・所管の比較

表のとおり、人数の下限や審査の有無だけを比べると、会社のほうが少人数で始められるように見えます。しかし農業では、法人格の軽さより、集まる人の関係が選択を左右します。法人設立の動機が、近隣の農家が横並びで機械や作業を共同化することなら農事組合法人、外部の出資や経営人材を受け入れたいなら会社形態が候補に上がる、という具合です。

農事組合法人も会社も、農地を所有するには農地法の要件を満たす必要があります。農事組合法人でも、会社でも、農地を取得したい場合に問われる条件は次の見出しの農地所有適格法人です。税制の区分は細部が複雑なので、税理士や国税庁の案内で必ず確かめてください。法人設立 法人格の分類では、法人格を変える場合の考え方もまとめています。

出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅴ農業生産法人 設立 要件|農地所有適格法人の四つの条件

農地を持てる法人の条件は四つ

かつて農業生産法人と呼ばれた法人は、いまは農地所有適格法人という名前です。農地法第2条第3項が、農事組合法人、公開会社でない株式会社、持分会社であって、次の要件の全てを満たすものと定めています。農地を所有したい法人設立では、この条件を満たす設計が前提になります。

法人形態
農事組合法人、公開会社でない株式会社、持分会社(合名・合資・合同会社)のいずれか
事業
主たる事業が農業であること。農畜産物を原料にした製造・加工など、農林水産省令で定める関連事業と、農業と併せ行う林業を含む
議決権
農業関係者が持つ議決権が総議決権の過半を占めること。農業関係者の範囲は、法人に農地を提供した個人や、法人の農業に常時従事する個人などが条文に列挙されている
役員
常時従事者である構成員が理事等の過半を占めること。さらに理事等または重要な使用人のうち1人以上が、省令で定める日数以上、農作業に従事すること

農林水産省の資料は、議決権について農業関係者以外の持分を総議決権の2分の1未満とし、役員要件の従事日数を、役員の過半について原則年間150日以上、1人以上について原則年間60日以上と示しています。これらの日数は条文ではなく省令や基準に基づく数字なので、設立の前に農林水産省の最新の資料を確かめてください。

農地所有適格法人の四つの要件の確認項目
図:農地所有適格法人の四つの要件の確認項目

要件は法人設立の時に満たせばよいわけではなく、成立後も続けて満たす必要があります。出資者が増える、役員が代わる、事業の中心が農業から加工や販売に移る、といった変化が生じるたびに、要件を満たしているかを見直す習慣をつけてください。個別の要件の読み方は農地を所有する法人の要件で詳しく扱っています。

出典農地法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅵ農地を借りるだけなら|所有適格法人でなくても農業参入はできる

借りるだけなら、所有適格法人でなくても参入できる

農業に参入する会社の多くが勘違いするのが、農地を使うには農地所有適格法人でなければならないという思い込みです。農林水産省の資料「法人が農業に参入する場合の要件」は、農地の貸借であれば、農地所有適格法人の要件を満たさない一般の法人でも、全国どこでも参入できると説明しています。ここでいう貸借には、農業委員会の許可などの手続きが伴います。

農地を借りたい一般の法人は、同じ資料によると、貸借契約に農地を適切に利用しない場合には契約を解除する旨の解除条件が付されていること、地域における適切な役割分担のもとで農業を行うこと、業務執行役員または重要な使用人が1人以上耕作の事業に常時従事することといった条件を満たす必要があります。農地の権利を動かすには、農地法第3条に基づく農業委員会の許可が原則として要ります。

農地を所有する場合と借りる場合の手続きの分かれ方
図:農地を所有する場合と借りる場合の手続きの分かれ方

貸借から始めて、事業が軌道に乗ったあとで所有適格法人への移行を考える進め方もあり、その場合も法人設立の時点で定款の株式譲渡制限などを意識しておくと楽になります。法人設立の段階で所有を前提にした出資構成にしてしまうと、後から動かしにくくなることがあるので、最初に農地の権利をどうするかを決めておくと、定款や出資の設計がぶれません。

農地の取得や貸借の全体像は、農林水産省の法人の農地取得のページにまとまっています。

注意農地の許可や借りられる農地の探し方は、市町村の農業委員会や都道府県の農地中間管理機構が窓口です。地域の事情で運用が違うため、農地を探す前に農業委員会へ相談してください。

出典法人の農地取得(農林水産省・確認日 2026年10月12日)

標本 Ⅶ農業法人にするかどうか|個人経営との違いと決める順番

個人経営と法人、決める順番を確かめる
個人経営と法人、決める順番を確かめる

農業法人 メリットという検索は多いのですが、メリットと負担は同じ出来事の裏表になっています。法人設立をすると、農業の収入や契約が個人から法人へ移ります。取引先や金融機関との契約が法人名義になり、経営と家計の財布が分かれる一方、経理の記録、役員の責任、手続きの量は増えます。

農事組合法人のよくある質問が設立の手続き要件から丁寧に説明していることからも分かるように、制度の細部は法人格ごとに違います。メリットだけを数えるのではなく、自分たちの営農がどの法人格の仕組みに乗るのかを順番に確かめるのが近道です。利点と負担を一つずつ並べて読む方法は、農業法人の設立メリットと負担にまとめました。

  • 家族の中だけで経営するのか、近隣の農家や外部の人と一緒に営むのか
  • 農地は所有するのか、借りるのか。所有するなら、出資者の顔ぶれは農業関係者が過半になるか
  • 法人の事業は共同利用に限るのか、農産物を作って売るところまで含めるのか
  • 役員や構成員が減ったとき、後継ぎがいないとき、法人をどう続けるのか
農業の法人設立を決める前に確かめる項目と、立ち止まるべき項目
図:農業の法人設立を決める前に確かめる項目と、立ち止まるべき項目

社会保険や税の扱いは、法人化すると取り扱いが変わる場面があります。細かな制度の話は姉妹サイトの担当テーマ(社会保険)に譲ります。税の区分は国税庁の案内か税理士に確認してください。

出典農事組合法人のよくある質問(農林水産省・確認日 2026年10月12日)

標本 Ⅷまとめ|法人格・事業・農地の三つを分けて進める

三つを分けて、順に決める
三つを分けて、順に決める

農業の法人設立は、農業法人という呼び名を、三つの具体的な問いに言い換えるところから始まります。ひとつは法人格。農事組合法人なら農民3人以上が発起人となり、登記の後に行政庁へ届出を出します。会社形態なら会社法に沿って設立します。

もうひとつは事業の範囲です。農事組合法人は、共同利用施設・農作業の共同化、農業の経営、附帯する事業に限られます。最後のひとつは農地の権利で、所有するなら農地所有適格法人の要件を満たし、借りるだけなら一般の法人でも条件に沿って参入できます。

  1. 農業法人と呼んでいるものを、法人格・事業・農地の権利に書き分ける
  2. 農事組合法人か会社形態かを、人の集まり方と事業の範囲から選ぶ
  3. 農地を所有するか借りるかを決め、所有なら農地所有適格法人の要件を点検する
  4. 都道府県の農業担当課と農業委員会に、定款案と農地の計画を持って相談する

法人設立の手続きは、法人格ごとに窓口が違います。農事組合法人の設立後の届出は行政庁へ、農地の権利移動は農業委員会へ、会社の登記は法務局へ、というように分かれます。農業に関わる制度は改正されることがありますので、ここに書いた内容は2026年10月23日時点のものとして、最新の内容を必ず所管の窓口で確認してください。

法人格の全体像を先に見たい場合は、法人設立 種類の分類で、農業を含む11の法人格を同じ物差しで並べています。

畑の端に立って、誰と何を作り、誰が農地を預けてくれるのかを紙に書き出してみてください。その紙が定款の下書きになり、窓口に持っていく相談メモにもなります。法人格の名前は、そのあとで決めて間に合います。迷いが残ったところは、都道府県の農業担当課と農業委員会に、遠慮なく聞いてみてください。

出典法人が農業に参入する場合の要件(農林水産省・確認日 2026年10月12日)

他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください

この記事のテーマと「法人設立」「法人格」「手続き」で検索して見つかったページです。掲載順は優劣を示すものではありません。内容の更新は各サイトが行うため、最新の情報は掲載元でご確認ください。

pref.kyoto.jp

京都府|農業協同組合・農事組合法人の案内

農事組合法人の設立後に必要な届出などを府の窓口が案内しています。

農林水産省|法人制度の紹介(担い手向け)農業経営の法人化の考え方と制度を省の担い手向けページで紹介しています。
弥生|農業法人の設立ガイド
農業法人の種類と設立のポイントを会計ソフト会社の解説でつかめます。
yayoi-kk.co.jp
freee|農業法人の設立方法

会社法人と農事組合法人の違いと設立の流れをまとめた解説です。

集落営農法人の設立手順を県の手引きで順に追えます。
島根県|法人設立の手引き(本文)

農林水産省|法人設立の手続(担い手向け)

農業法人を設立するときの手続きを省のページで確認できます。

maff.go.jp を開く
マイナビ農業|農業の法人化(2024年記事)農業を法人化するときの流れと注意点を農業メディアで読めます。

マイナビ農業|農業の法人化(2018年記事)農業の法人化の要点をまとめた農業メディアの記事です。

「農業」の記事

動画・SNSでも話題を探す

「法人設立 農業」について各サービスで検索できます。外部の検索結果であり、当編集部による推薦・内容の確認を示すものではありません。閲覧にログインが必要な場合があります。

YouTube

説明動画の検索結果へ

YouTubeで検索

X

Xで検索

投稿の日付や出典も確認してください。