こんな人に向けて書きました
- 法人設立ワンストップサービスという名前は聞いたが、何が一度に済み、何が別になるのかをまだ整理できていない人
- 株式会社や合同会社だけでなく、一般社団法人やNPO法人の法人格でも使えるのかを知りたい人
- ネット上の「やってみた」記事と公式の説明が食い違って見え、どれを信じてよいか迷っている人
法人設立の手続きは、公証役場、法務局、税務署、自治体、年金事務所と、窓口が分かれています。その入口を一つに束ねる目的で、デジタル庁が運営しているのが法人設立ワンストップサービスです。名前から「これ一つで全部終わる」と受け取られがちですが、実際には法人格によって使える範囲が違い、窓口の外に残る手続きもあります。
参照したのは、サービスのFAQ・ウェブマニュアル・利用規約と法務省の案内で、閲覧日は2026年10月23日です。画面を自分で動かして書いたものではないため、操作の細部は手順書に譲ります。ここで扱うのは、どの法人格のどの手続きが対象かという見取り図と、受付時間をシステムごとに切り分ける読み方です。
01法人設立ワンストップサービスとは|デジタル庁が運営する電子申請の入口

公式FAQは、このサービスを「法人設立に関する各省庁の手続を一度にまとめてオンライン申請できるサービスの総称」と説明しています。運営はデジタル庁で、利用料はかかりません。メンテナンス等による停止時間を除き、24時間利用できるとされています。つまり、法人設立にともなう複数の手続きを、窓口を回らずに電子申請で出すための入口です。
ここで大切なのは、サービスが「提出の方法」を一本化するものであって、審査する機関や法人格の成り立ちまで一本化するものではないという点です。株式会社は準則主義で、定款は公証人の認証を受けます。NPO法人は所轄庁の認証、医療法人や社会福祉法人は所轄庁の認可が必要です。こうした法人格ごとの仕組みは、オンラインで出しても変わりません。法人設立の中身を決めるのは根拠法で、画面は出し方を決めるにすぎません。
公式FAQによれば、サービスの機能は三つです。必要な手続きをリストアップする「かんたん問診」、申請内容を送信する「手続のオンライン申請」、そして提出した申請の「状況確認」です。申請内容は途中で保存して、あとから再開できます。次の章で、この三つが法人設立の流れのどこに入るのかを見ていきます。
注意名前の似た民間の設立支援サービスや相談窓口もあります。この記事で扱うのは、デジタル庁が運営する公式サービスだけです。
出典法人設立ワンストップサービス よくある質問(デジタル庁・確認日 2026年10月12日)
02何がまとめて済むのか|問診・申請・状況確認の三つの機能

公式のウェブマニュアルは、使い方をA〜Gの章に分けています。申請方法の確認、手続の選択、手続の申請、申請の保存・再開、申請状況の確認、不受理申請の再申請、申請済み情報の取下げです。流れとしては、問診で必要な手続きを洗い出し、申請者の本人確認をしたうえで、手続きごとの項目を入力し、添付ファイルを登録して電子署名を付け、送信します。送信後に「要再申請」と出たときの読み方は、法人設立ワンストップサービスで再申請になったらで掘り下げています。

問診の使い道は、自分にどの手続きが必要かを探す段階にあります。問診結果では、申請が必要と判定された手続きにチェックが付き、名称の右に「必須」と出るものは、法人設立後に一定期間内に必ず申請が必要な手続きです。判定されなかった手続きも、別の一覧から選んで申請できます。問診は便利な目安ですが、最終的な判断は法人格と事業の実情に照らして自分で確かめる必要があります。
申請状況の確認はマイナンバーカードでログインして行い、申請を受け付けた旨、各機関からのお知らせを受領した旨、すべての手続きが完了した旨がメールで届きます。個別の手続きの問い合わせは、サービスの窓口ではなく各申請先機関にするという整理も、FAQに書かれています。
サービスを説明する記事の中には、画面を実際に動かした体験談が多くあります。ただ、画面の表示は更新されるため、古い体験談に合わせて進めると食い違うことがあります。この図鑑は体験談を書かず、公式の手順書に沿って手続きを説明する方針です。
出典法人設立ワンストップサービス ウェブマニュアル(デジタル庁・確認日 2026年10月12日)
03法人格ごとに見る|対象になる手続き・ならない手続き

「うちの法人格でも使えるか」という疑問に、一つの答えは出せません。理由は、サービスの手続きが「設立登記」「定款認証」「設立後の届出」といった行為単位で用意されていて、法人格の名前で一括りにはされていないからです。FAQに出てくる設立登記の区分名は、会社の種類を軸に付けられています。下の表は、FAQの記載と各法人格の制度を突き合わせ、確かめられた範囲だけを並べたものです。
| 区分 | 設立の方式 | FAQに現れる登記申請の区分名 | 画面の外に残る窓口 |
|---|---|---|---|
| 株式会社 | 準則主義。定款は公証人の認証を受ける | 「株式会社の定款認証同時申請用」などの区分がある | 公証役場・法務局 |
| 合同会社・合名会社・合資会社 | 準則主義・定款認証なし | 「合名・合資・合同会社用」の区分がある | 法務局 |
| 一般社団法人・一般財団法人 | 準則主義。定款は公証人の認証を受ける | FAQの区分名には出てこない(一覧で個別に確認) | 公証役場・法務局 |
| NPO法人 | 所轄庁の認証 | FAQの区分名には出てこない | 所轄庁(都道府県・政令市)・法務局 |
| 医療・社会福祉・学校などの認可法人 | 所轄庁の認可 | FAQの区分名には出てこない | 各所轄庁・法務局 |
表の読み方に注意が必要です。「FAQの区分名には出てこない」は、使えないと断定する意味ではありません。申請可能な手続の一覧は画面の上で更新されるため、私が確認できたのはFAQの文言までです。一般社団法人やNPO法人で使う予定があるときは、サービス上の「申請可能な手続一覧」で、設立登記に対応する項目があるかを実際に開いて確かめてください。
一方、設立後の税・社会保険の届出は事情が違います。公式マニュアルは、設立登記が完了している場合でも、法人設立に伴う社会保険・税の手続きをこのサービスで行えると案内しています。ただし、届出がどの法人格に必要かは別の話です。届出をオンラインで出す具体的な進め方は、姉妹サイト(設立後の手続き)に任せます。対象の見分け方は、ワンストップサービスの対象を法人格と手続きで確認する記事で掘り下げています。
出典B. 手続の選択 〖3.一覧から手続を選択する〗(デジタル庁・確認日 2026年10月12日)
04設立登記の申請区分と定款認証|画面で選ぶ区分の読み方

公式FAQには、設立登記の申請として次の四つの区分が出てきます。商業登記電子証明書の発行を同時に申請するもの、株式会社の定款認証と電子証明書の発行を同時に申請するもの、合名・合資・合同会社用および株式会社の定款認証同時申請以外のもの、株式会社の定款認証を同時に申請するものです。電子証明書の発行が必要な場合は前の二つのどちらか、不要な場合は後の二つのどちらかだけを選ぶ、という整理がFAQに書かれています。
この区分から分かるのは、定款認証が「株式会社」について特別に扱われていることです。会社法の仕組みでは、株式会社は公証人の認証を受けた定款が必要で、合同会社には認証の手続きがありません。ワンストップの画面も、その違いをそのまま反映しています。画面の選択肢が違うのは、法人格ごとに制度が違うためだと理解しておくと、問診で迷いにくくなります。
定款認証の運用については、法務省民事局と日本公証人連合会の案内(2025年3月3日版)が公開されています。定款作成支援ツールを使った定款は、原則として48時間以内に認証手続を完了する運用や、電子定款の面前審査をウェブ会議で行うことを原則とする運用が、全国に広がっているとされています。48時間の起算点は必要な資料がすべて公証役場にメールで届いたときで、土日祝日は算定に含まれません。対象は、発起人の人数などに制限のある小規模な株式会社の定款に限られる点も、案内に書かれています。
注意設立登記の申請書類の作り方、添付書類、登記完了までの日数は、姉妹サイト(設立の流れ・必要書類)の担当です。ここでは「区分の名前の読み方」までにとどめます。
出典株式会社の設立手続がスムーズに!定款認証の「2つの原則」(2025年3月3日版)(法務省民事局・日本公証人連合会・確認日 2026年10月23日)
05ワンストップでも残る手続き|認証・認可・許認可は別の窓口

法人設立ワンストップサービスという名前に引っ張られて、法人格の取得に必要な審査まで画面で完結すると考えるのは禁物です。NPO法人は所轄庁の認証、医療・社会福祉・学校などの認可法人は所轄庁の認可を受けて初めて設立の手続きが進みます。この審査は、サービスの申請とは別の窓口で行われます。
NPO法人の場合、内閣府が運営するNPO法人ポータルに、ウェブ報告システムという別の入口があり、設立前の相談段階にある人の申請・届出も扱うと案内されています。もっとも、いつから使えるか、どの手続きが乗るかは所轄庁で差があり、書面での提出も残っています。つまり、NPO法人の認証の申請は、ワンストップサービスではなく所轄庁ごとのオンライン手続きを確認することになります。
- 事業を始めるための許認可(飲食・人材派遣・建設など)は、法人設立の手続きとは別の申請になる
- 認証・認可を受ける法人格では、所轄庁の審査の期間が設立の時期を左右する
- 登記が済んだあとの口座開設や取引先への届出は、サービスの外で進める
どの手続きが窓口の外に残るのかは、ワンストップサービスでも残る個別手続きの記事に整理しました。また、認証・認可の法人格ごとの違いは、法人設立 NPOや法人設立 認可のカテゴリーで読み比べられます。電子申請そのものの範囲については法人設立 マイナポータルのカテゴリーも参考になります。
出典NPO法人ポータルサイトとウェブ報告システム(内閣府・確認日 2026年10月12日)
06使えるとき・使えないとき|本人のカード・本人申請・環境の条件

公式の手順書が挙げる条件を整理します。入口の条件は、本人のマイナンバーカード(物理カードでも搭載版でも)と、それを読む手段です。パソコン系ならリーダライタかスマートフォン、スマートフォン申請ならマイナアプリ入りの端末という組になります。機器ごとの読み取りの細かい違いは、法人設立 マイナポータルの側に委ねます。
次に、申請は本人が行う必要があります。代理申請は認められていないと、FAQに明記があります。税理士や司法書士に依頼する場合に、どの手続きをどこまで任せられるかは、サービスの外の話として専門家に確認することになります。登記の申請代理は司法書士、税務の相談は税理士の業務で、この図鑑は代行を行いません。
- 操作せずに180分以上たつと自動的に切断され、最初から入力し直しになる
- 添付ファイルはPDF・jpeg・jpg・txt・csvなど、手続きごとに決まった形式で登録する
- 電子署名が必要な添付書類には、あらかじめ署名を付けておく
- OSやブラウザの対応は「動作環境」ページで確認する
費用面では、サービスの利用そのものに料金はかかりませんが、定款認証や設立登記など、手続きごとに所定の費用がかかるものがあります。この費用の内訳は姉妹サイト(設立費用)の担当です。なお、記事を読む時点では動作環境が更新されている可能性があるため、操作の直前に公式ページを開いて確認することをおすすめします。
注意FAQによれば、このサービスを使うのにマイナポータルへのログインは求められません。両者の関係はマイナポータル側のカテゴリー記事にまとめてあります。
出典動作環境|法人設立ワンストップサービス(デジタル庁・確認日 2026年10月23日)
07受付時間は混ぜない|サービス・登記システム・各機関の稼働時間

ワンストップサービスが24時間使えることと、その申請が24時間受け付けられることは別のことです。公式FAQは、申請の提出日時は申請先機関のシステムの稼働時間によって決まると説明しています。申請を送信した時点で申請先のシステムが稼働していれば、その時刻が提出日時になります。稼働時間外であれば、申請先のシステムが動き出した時点で自動的に受け付けられ、その受付日時が提出日時です。
| システム・窓口 | 確認できた時間 | 備考 |
|---|---|---|
| 法人設立ワンストップサービス | メンテナンス等を除き24時間 | 問い合わせ窓口は9:30〜18:30、メールは24時間受付 |
| 登記・供託オンライン申請システム | 平日8:30〜23:00/休日8:30〜18:00(12/29〜1/3を除く) | 予告なく停止・休止することがある |
| 登記所での登記申請の受付 | 平日8:30〜17:15 | 17:15以降や休日に送信した申請は、翌業務日に受付 |
| 年金事務所のシステム | 月〜金 8:30〜19:30(年末年始・祝日を除く) | FAQによる基本の稼働時間 |
| 労働基準監督署・公共職業安定所のシステム | 終日・通年(保守時を除く) | FAQによる基本の稼働時間 |
表の時間は、どれも公式の案内に書かれた文字列から拾ったものです。登記・供託オンライン申請システムの時間は法務省のページで、年金事務所・労働基準監督署・公共職業安定所の時間はワンストップサービスのFAQで確認しました。税務署(e-Tax)と地方公共団体の時間は、FAQが各機関の案内ページへ誘導しているので、数字は写さずリンク先で確かめてください。
登記の申請を急ぐ日程では、法務局の受付が平日17時15分までという点が効いてきます。夜間に送信した申請は、翌業務日の受付になります。法人設立の日をこの日にしたいという希望があるときは、時間の違いを踏まえて逆算します。日付の決め方は、姉妹サイト(会社設立日)の領分です。
法人設立の手続きが集中する時期には、システムの障害や保守で一時的に使えなくなることもあります。サービスのトップページには、障害の発生時間や保守の予定が掲載されています。申請の直前に確認する習慣をつけておきましょう。
出典登記・供託オンライン申請システム(ご利用可能時間)(法務省・確認日 2026年10月23日)
08まとめ|ワンストップは「提出の入口」、法人格の選択は別に済ませておく

法人設立ワンストップサービスは、デジタル庁が運営する電子申請の入口です。問診で手続きを洗い出し、マイナンバーカードで本人確認をして、電子署名を付けて送信し、状況を確認するところまでが一つの画面でつながります。利用料はかからず、サービス自体は24時間使えます。
一方で、対象になる手続きは法人格ごとに違います。株式会社と合同会社などの会社は、設立登記の申請区分が用意されています。一般社団法人・NPO法人・認可を受ける法人格については、この記事で確認できたのは公式FAQの文言までで、画面の一覧で個別に確かめる必要があります。審査や認証・認可、事業の許認可は窓口の外に残ります。

制度とサービスの画面は更新されます。この記事の内容は2026年10月23日時点で公式の案内を確認したものです。申請の直前には、必ずデジタル庁の公式ページと各申請先機関の案内を確かめてください。全体像を法人格の側から見直したいときは、法人設立 種類のカテゴリーに戻るのが近道です。
ワンストップサービスの画面を開く前に、まず自分の法人格の設立の方式を紙に書き出してみてください。認証なのか認可なのか、公証人の関わりがあるのかが分かれば、問診の結果を読む目が変わります。疑問が残る手続きは、所管の窓口や専門家に早めに聞くのがいちばんの近道です。
出典法人設立ワンストップサービス(デジタル庁・確認日 2026年10月12日)
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サービス開始時の報道記事で、当初の仕組みを確かめられます。
令和2年1月から法人設立ワンストップサービスがスタート(鳥取県)
法人設立ワンストップサービスの対象が、全ての手続に拡大(山田&パートナーズ) 税理士法人による、対象拡大のお知らせ記事です。 法人設立ワンストップサービスとは?概要から注意点まで(BIZARQ会計事務所)
