SPECIMEN LABELNo.081
- 対象の法人格
- 株式会社・持分会社・一般法人・NPO法人
- 根拠法
- 会社法第330条・第331条・第607条、一般法人法第64条・第65条、NPO法第20条、民法第653条、破産法第255条
- 所管
- 登記は法務局。NPO法人の認証は所轄庁。破産関係の判断は裁判所
- 設立の方式
- 会社・一般法人は準則主義。NPO法人は所轄庁の認証後に登記
破産経験と法人設立|役員の欠格事由を法人格別に確かめる

この記事を読んでほしい人
- 破産経験がある状態で法人設立を検討している人
- 役員候補の資格を正確に確かめたい団体
- 破産・免責・復権という言葉を整理したい人
過去に破産したことがある。それだけを聞いて、「会社は一切つくれない」とも「どの法人の役員でも問題ない」とも言い切れません。法人設立を考える際は、どの法人格のどの役職なのか、手続きが現在どの段階なのかを確認します。
本記事は2026年10月12日に確認した日本の法令を基にした一般的な整理です。個別の欠格事由や財産の扱いは、決定書などの資料によって確認してください。資産を新法人へ移す計画や、進行中の破産手続きに関係する判断は、担当する弁護士・破産管財人へ具体的に相談する必要があります。
標本 Ⅰ破産したという言葉を現在の法的状態に直す

日常会話では、弁護士に相談した段階から免責が確定した後まで、まとめて「破産した」と呼ぶことがあります。しかし、法律の条件を調べるときは、この表現だけでは足りません。申立てをしたのか、破産手続開始の決定があるのか、免責許可の決定が確定しているのかを分けます。法人設立の相談へ持っていく資料も、その状態に応じて変わります。
NPO法人の役員資格などでは、復権を得ているかが問題になります。破産法第255条は、免責許可の決定が確定した場合などに復権することを定めています。決定が出たことと確定したことを混ぜず、確定の有無を確認してください。すべての事例で同じ日付を起算点にしたり、年数だけから復権を推定したりすることは避けます。
さらに、破産手続きと免責は目的が異なります。財産を清算する手続きが進んだことだけで、当然にすべての債務について返済責任がなくなったとはいえません。法人格を新たに得ることも、個人の債務の処理に代わるものではありません。個人の状態を整理したうえで、別の主体となる法人設立を検討する順序が大切です。
- 開始決定
- 破産手続を開始する裁判所の決定。役員との委任関係にも関わる場合があります。
- 免責許可の確定
- 免責に関する決定が確定した状態。復権の事由の一つです。
- 復権
- 破産による資格上の制限を考える際に確認する状態。効果は関係法令にも従います。
法人設立の可否を一つの履歴だけで判断しないために、出来事と日付を短い時系列にしておきましょう。記憶が曖昧なときは、手元の書面や裁判所の証明に関する案内から確かめます。
出典破産法 第34条・第78条・第255条(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
標本 Ⅱ株式会社では破産経験そのものと取締役の欠格を分ける

会社法第331条にある取締役の欠格事由には、破産経験があること自体は挙げられていません。したがって、過去に破産したというだけで株式会社の取締役になれないと結論づけるのは正確ではありません。法人設立を考える人は、古い商法時代の説明を現行の条件と混同していないかも確認してください。
一方、同条は法人や一定の刑に処せられた者などについて資格の制限を定めています。破産法違反の一定の罪に関する規定もありますが、破産の申立てをしたことと、犯罪により刑に処せられたことは全く別です。法人設立の記事に「破産」という言葉が出てきたら、破産手続の状態について述べているのか、特定の法令違反について述べているのかを読み分けます。
株主として出資する立場、発起人として設立に関与する立場、取締役として会社を運営する立場も区別します。取締役の欠格事由の説明だけで、出資財産を自由に使えるかという別の問題は解決しません。進行中の破産手続きがあるなら、資金や株式などの財産がどのように扱われるかを担当者へ確認する必要があります。
会社であることを明示する
株式会社についての結論を、NPO法人や分野別法人へ広げないでください。法人格の名前と役職を併記して確認すると、異なる法律の条件を混ぜずに済みます。
この区別により、法人設立の相談で必要なのは「ブラックリストに載っていますか」という曖昧な問いではなく、「現在の状態で、この会社のこの立場に就くために、どの規定を確認するか」という問いになります。信用情報の登録は後述する別の論点です。
出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)
標本 Ⅲ一般法人の理事・監事にも固有の資格規定がある

一般社団法人の理事と監事について、一般法人法第65条は役員になれない者を定めています。ここにも、破産経験そのものを欠格事由とする規定はありません。一般財団法人の役員等についても、準用される条文を含めて確認します。法人設立に参加する人の資格は、団体の名前の印象ではなく、その法人格を規律する法律で調べます。
一般法人法には刑に関する欠格事由のほか、監事が法人やその子法人の理事・使用人を兼ねられないといった規律があります。破産の条件だけを調べて「全条件を満たす」と判断しないことも大切です。予定する役職、他の法人との関係、親族関係が追加の制度要件に関わるかなど、設計全体を確認します。
また、理事や監事という役職と、一般社団法人の社員、一般財団法人の設立者という立場は同一ではありません。社員として総会で議決権を持つ人と、役員として職務を引き受ける人の条件は分けて考えます。法人格を取得するために誰の名前が必要かだけに注目すると、本人が承諾する仕事の内容が見えなくなります。
公益認定や税務上の非営利型に関する条件を希望する場合は、一般法人として成立する条件とは別に確認が必要です。法人設立の欠格事由に該当しないことから、追加の認定を受けられると結論づけないでください。設立時の役員選任だけでなく、成立後に目指す運営と制度を整理することが重要です。

出典一般社団法人及び一般財団法人に関する法律|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)
標本 ⅣNPO法人の役員では復権の有無を確認する

特定非営利活動促進法第20条第1号は、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者を、役員になれない者として定めています。株式会社や一般社団法人と同じ説明にはなりません。NPO法人という法人格で法人設立を検討する場合は、本人が復権を得ているかを確認したうえで理事・監事の候補を選びます。
同法による役員の資格確認は、本人の過去を広く評価する審査ではなく、列挙された要件に該当するかという確認です。破産経験のある人は永久に活動へ参加できないという説明をしないでください。また、役員の欠格事由に関する説明を、あらゆる参加の仕方に同じように当てはめることも避けます。具体的な立場を示して所轄庁へ相談します。
設立の認証申請では、役員の欠格事由等に該当しないことの誓約と就任承諾に関する書面が求められます。形式的に署名を集めるのではなく、本人が内容を理解しているかが大切です。法人設立の準備担当者が、本人に代わって経歴や現在の状態を推測して記載することは避けましょう。
NPO法人の役員には、破産に関するもの以外の欠格事由や親族等の制限もあります。復権を確認すれば、すべての資格確認が終わるわけではありません。法人設立に必要な組織全体の要件と、個々の役員の要件を分けた確認表を使い、どの項目が未確認なのか見える形にしておくと相談を進めやすくなります。
注意資料に古い欠格条項が残っている場合があります。役員の資格に関する記載は、現在施行されている法律と所轄庁の最新様式で確認してください。過去の申請書をそのまま再利用しないようにします。
出典特定非営利活動促進法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)
標本 Ⅴ就任中の開始決定は委任関係や社員の地位に関わる

新しい法人設立で役員に就くことが可能かという話と、すでに役員である人に破産手続開始の決定があった場合の扱いは分けます。民法第653条は、委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたことを委任の終了事由としています。会社法第330条や一般法人法第64条が定める委任関係を通じて、役員の地位を確認する必要が生じます。
現在の欠格事由に破産そのものがないという説明だけを読んで、在任中の地位も何も変わらないと理解するのは避けます。退任、選任、就任承諾、必要な登記などを、それぞれの法人格と事実関係に即して確認します。再び就任することが可能な場合でも、何の手続きもせずに以前の状態が続くとは限りません。
合同会社などの持分会社については、会社法第607条が社員の法定退社事由を定めています。破産手続開始の決定も掲げられていますが、同条第2項には、一定の事由によって退社しない旨を定めることができる規定があります。ここでいう社員は従業員ではなく出資者たる構成員です。定款の内容を確認せず、株式会社の役員と全く同じだと考えないでください。
法人設立後の運営中に個人の状態が変わった場合には、法人の代表権や意思決定に空白が生じないよう、関係資料を早めに専門家へ示します。誰が現在有効に職務を行えるかが不明なまま契約を進めると、相手方との関係にも影響します。法人格は同じままでも、役職や構成員の地位は別途確認する必要があります。
既存の法人について確認する場合、過去にどのような登記がされたかと、法律上いつ地位が変わったかを分けて調べることがあります。登記簿に名前が残っていることだけを根拠に、現在もすべての権限を行使できると判断しないでください。事実関係を伝えずに一般的な書式だけを選ぶと、退任や就任の原因の記載が合わないおそれがあります。まず状態を確定させ、その結果に沿って必要な対応を決める順序が重要です。
相談に必要な組合せ
対象の法人の定款、現在の登記事項、役員等の選任資料、破産関係の決定書をそろえます。どれか一枚だけを見て、すべての地位の変化を判断しないでください。
出典民法 第33条・第34条・第99条・第539条の2ほか(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
標本 Ⅵ新法人へ財産を移す前に管理権限を確かめる

破産の手続きが進行している場合、法人設立の資金に使おうとしている財産を自由に処分できるとは限りません。破産法第34条は破産財団の範囲を定め、第78条はその財産の管理・処分をする権利が破産管財人に専属することを定めています。自分名義の財産だから自分だけで決められるという理解は避けます。
新法人への出資、貸付け、寄付、備品の売却など、形を変えても財産を動かす行為であることに変わりはありません。法人格を新しく取得すれば、既存の債権者との関係を無視して資産を移せるわけではありません。何をどの条件で移す予定なのかを担当弁護士や破産管財人へ説明し、必要な確認を得ることが先です。
法人設立の相談では、使う予定の資金がいつ、どの原因で得られたものか、誰に帰属するかを整理します。古い事業の売上、個人の預金、家族の資金、借入金などを混ぜたまま扱うと、権利関係を説明しにくくなります。法律上利用できる財産の範囲は個別事情に左右されるため、一般的な記事の数字だけで判断しないでください。

必要な確認の結果、計画の時期や資金構成を変えることもあり得ます。法人設立の完了を急ぐことより、本人の再出発と債権者との法律関係を整合させた計画にすることが重要です。
出典破産法 第34条・第78条・第255条(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
標本 Ⅶ役員の資格と金融取引の判断は別々に進む

法令上役員に就くことができると分かっても、融資やクレジットなどの取引が必ず成立するわけではありません。全国銀行個人信用情報センターは、登録した信用情報を会員の与信取引上の判断の参考資料として提供する仕組みを説明しています。登記による法人格の成立と、金融機関等による取引の判断は目的が違います。
反対に、ある金融取引が成立しなかったことから、法人設立の資格が法律上否定されたと結論づけることもできません。本人確認、事業内容、資金計画、保証の条件など、取引ごとに確認される事項があります。何を申し込み、どの段階で説明を求められているのかを区別し、相手方の案内に沿って対応します。
信用情報には登録機関や情報の種類に応じた保有期間がありますが、役員の欠格事由の期間と同じではありません。復権した日、契約が終了した日、信用情報の登録が終わる時点を一つの期限として扱わないでください。法人設立を予定する時期を決めるためにも、法律上の確認と金融取引上の確認を分けて進める必要があります。
資金調達を前提とする事業計画では、希望する借入が未確定であることをそのまま計画へ反映します。法人格を得たら必ず貸してもらえるという見込みで、大きな支出を確定させないようにします。ここでは融資商品選びを扱いませんが、法人設立の条件と資金計画の成立を別々に確かめることは欠かせません。
- 法律上の役員資格は根拠法と現在の状態で確認する。
- 信用情報は登録機関の本人開示等で確認する。
- 金融取引の条件は申込み先が示す案内で確かめる。
- 一つの確認結果を他の確認の代わりにしない。
出典全国銀行協会|信用情報センターの概要(全国銀行協会・確認日 2026年10月12日)
標本 Ⅷまとめ|法人格・役職・時点をそろえて判断する

破産経験がある人の法人設立は、法人格ごとの法律を読んで確認する問題です。株式会社の取締役と一般法人の役員では破産経験そのものは欠格事由に挙げられていませんが、NPO法人の役員では復権の有無が関わります。さらに、就任中の委任終了や持分会社の社員の退社は、新規就任の資格とは分けて扱います。
進行中の手続きがあるときは、法人設立へ使う財産の管理権限を先に確認してください。名義を変えることや新しい法人格を使うことによって、既存の権利関係を回避できると考えないことが大切です。決定書、定款、資金の資料をそろえれば、専門家への相談を具体的に進められます。
法人の種類をまだ決めていない場合は、法人格の種類一覧で活動に合う候補を確認します。資格の確認だけでなく、今後どの事業を、誰と、どの資金で継続するのかまで整えた計画として法人設立を考えてください。
過去の経験を一言でまとめず、現在の状態と予定する役職を書き出してみましょう。その資料を基に、根拠法の確認と個別の相談を進めることが、無理のない法人設立につながります。
出典破産法 第34条・第78条・第255条(e-Gov法令検索・確認日 2026年10月12日)
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