本文へ移動

SPECIMEN LABELNo.048

対象の法人格
共同で事業を行う株式会社・合同会社
根拠法
会社法 第108条・第308条・第585条・第590条・第622条ほか
所管
会社の設立登記は管轄法務局
設立の方式
両形態とも設立登記で成立する準則主義。設立時定款の公証人認証は株式会社のみ必要

共同事業に向く会社の選び方|持分・株式・意思決定

確認日 2026年10月12日読了 約11分編集 『法人設立のえらびかた図鑑』編集部合同会社

共同事業に向く会社の選び方|持分・株式・意思決定

この標本ページの読者

  • 知人や同業者と共同で事業を始める人
  • 出資額と仕事量が異なる創業メンバー
  • 将来の参加・離脱まで考えて会社を選びたい人

一緒に働く相手への信頼があっても、会社の規則を決めなくてよいわけではありません。出資する額、使える時間、得意な仕事、将来の希望は、人によって違います。法人設立の準備は、その違いを否定するのではなく、違いがあるまま共同で判断できる条件を作る機会です。

以下では架空の共同事業を検討材料として使い、2026年10月12日に原文確認した会社法の規定と照らします。実際の体験談ではありません。会社は法人の一種で、株式会社も合同会社も法人格を持ちます。個別の定款や契約は、当事者の事情を専門家へ伝えて設計してください。

標本 Ⅰ同額出資の二人でも、同じ働き方とは限らない

資金・時間・技能を別々に書き出す

二人の知人が、デザインと販売の共同事業を始める場面を考えます。資金は同額でも、一人は毎日働き、もう一人は別の仕事を続けながら週末に参加する予定です。二人が「公平に分けよう」と話していても、公平が出資額を指すのか、仕事量を指すのかで、期待する結果は違います。法人設立の前に意味を確かめる必要があります。

会社法では、株主の配当などの権利、取締役の報酬、持分会社の社員の利益配当などが、それぞれ別の規定で扱われています。共同事業の売上が入ったとき、そのお金をどの根拠で誰へ支払うのかを明らかにします。出資の見返りと、毎日の仕事への対価を一つの割合だけで表そうとすると、後で説明が難しくなります。

まず、出せる資金、働ける時間、提供する設備や技術、顧客との関係を別々の欄へ記入します。これらの貢献は、すべて同じ種類の出資として扱えるとは限りません。法人格を選ぶ前に実態を整理し、どこを出資とし、どこを業務委託や職務の対価などとして検討するのかを相談します。

最初の半年は忙しく参加できても、その後は家庭や本業の事情で時間が減る人もいるでしょう。その変化をすべて不誠実な行動と捉えるのではなく、働き方が変わったときに支払や役割をどう見直すかを考えておきます。法人設立で定める規則には、良好な関係を維持するための説明の基準という役割もあります。

資金の負担
誰がどの根拠で会社へお金を提供するか。
実務の担当
何の仕事を、どの程度継続して担うか。
経営の判断
重要な決定へどの立場で関わるか。
受け取るお金
仕事の対価か、出資に基づく配当かを区別する。

法人設立の手続きに入る前の打合せで、この四項目を一人ずつ説明してもらいます。全員が同じ額を出すから他の条件も同じという推測をやめるだけで、必要な相談が具体的になります。

出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅱ二人の意見が割れた場面から、決め方を点検する

仲のよい今こそ、不一致の場面を想定

前の例で、一人は新しい設備を購入したいと考え、もう一人は現金を残したいと考えたとします。どちらも会社のためを思っていても、結論は異なります。法人設立の準備では、意見が合うことを前提にするのではなく、合わないときに誰がどの根拠で決めるかを確認します。

株式会社の株主総会の決議は、会社法第309条などに定められています。通常の決議と重要な事項の決議では要件が異なり、定款や株式の内容の影響もあります。議決権を同じ割合で持つ設計は、一方だけでは決めにくくなる場面を生むことがあります。法人格を選ぶ際には、株式の割合と議題の性質を合わせて考えます。

合同会社の場合にも、二人なら何でもどちらか一人で決めてよいわけではありません。定款に別段の定めがない場合の業務の決定は社員の過半数によるなど、会社法の原則があります。日常の業務と定款変更のような事項では、必要な同意の扱いが違います。平等な関係を目指すという希望を、実際の手続きへ置き換えて検討します。

不一致の対策は、片方に無制限の権限を渡すことだけではありません。判断に使う資料を決める、一定の期間話し合う、助言を受ける、最終的には参加関係を見直す条件を検討するなど、事業に応じた合意を考えます。ただし、法定の機関の権限や強行規定に反する決め方を、当事者の合意だけで有効にできるわけではありません。

練習用の議題

大きな支出、借入、新たな参加者、主要事業の変更を一つずつ取り上げます。誰が決めるか答えが分かれる議題は、法人設立前に定款と契約の相談へ持ち込みます。

大切なのは対立を予言することではなく、判断が止まったときに事業や従業員へ影響が広がる前に対応することです。関係の良さと、決定手続きの明確さは、どちらも共同事業を支えます。

出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅲ議決権の割合と、利益の割合を同じものにしない

決める権利と、受け取る権利を区別
決める権利と、受け取る権利を区別

議決権の多さと、働いた対価として受け取る報酬の多さは、同じ基準で自動的に決まるものではありません。株式会社では、株式に関する権利と取締役の報酬の決定を区別します。共同創業者が出資と経営の両方に関わる場合こそ、一枚の分配表だけで関係を説明しようとしないことが大切です。

会社法第308条は株式についての議決権の原則を置き、第108条は配当や議決権などの内容が異なる種類株式の制度を定めています。法人設立を検討する段階では、株式会社にも権利の設計の選択肢があることを知っておきます。ただし、制度を複雑にすると管理する事項も増えるため、必要性を説明できる範囲で設計します。

合同会社では、社員の損益分配について、定款の定めがなければ出資価額に応じるという会社法第622条の規定があります。出資額と異なる貢献を配分へ反映したいなら、その趣旨を専門家へ伝え、定款上どのように定めるかを検討します。柔軟な法人格だから口約束だけで足りる、とは考えないでください。

たとえば商品開発を担う人と営業を担う人が、当初は同じ仕事量でも、成長後には部門の負担が変わるかもしれません。見直す時期と話し合いの対象を決めておくことが役立ちます。しかし、配分を変えたいと思った人が一方的に変更してよいわけではありません。定款や契約の変更に必要な手続きも一緒に確認します。

利益を全額払い出す計画が、会社の運営に適するとも限りません。設備の更新、商品の仕入れ、支払のための資金をどれだけ残すかを話し合います。法人設立の段階ではまだ売上予測が不確実だからこそ、配分する前に会社に必要な資金を把握する習慣を合意しておくと、期待の食い違いを減らせます。

注意配当、役員報酬、業務の対価では、会社法上の手続きも税務上の確認点も異なります。呼び名を変えるだけで希望する扱いになるものではないため、支払の実態を説明して相談します。

出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅳ代表者を決めるときは、営業の担当と区別する

契約を結ぶ権限を曖昧にしない
契約を結ぶ権限を曖昧にしない

共同事業では、顧客と話す人が日ごとに変わることがあります。営業を担当する人、価格を決める人、契約に署名する人が同じとは限りません。法人設立にあたり代表者を選ぶときは、名刺に載せる肩書だけでなく、対外的な法律行為をどの権限で行うかを確認します。

合同会社などの持分会社の代表については会社法第599条に規定があります。業務を執行する社員が原則として代表し、他に代表社員を定める場合などの扱いが定められています。複数人で法人設立をする場合に、全員がどの範囲で契約に関わるつもりなのかを曖昧にしないでください。

内部で大きな契約には共同創業者の承認が必要と決めても、その制限が第三者との関係で常に同じ効果を持つわけではありません。代表権に加えた制限を善意の第三者に対抗できない旨の規定があります。承認違反だから取引も当然になかったことになる、という想定で契約管理をしないようにします。

法人格を持つ会社の契約として、相手方へ提示する名称と代表する人を確認します。設立前の個人名で進めていた話と、設立後の会社の契約が混ざる場合には、相手と合意して主体を整理する必要があります。共同創業者の一人が持っている顧客関係も、法人設立しただけで自動的に会社へ移るとは限りません。

顧客との話を契約へ進める際の確認
図:顧客との話を契約へ進める際の確認

出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅴ仲間を増やすときの入口を用意しておく

採用・出資・経営参加は異なる入口

事業が成長して新しい人が加わる場合、従業員として働く、出資者となる、経営を担当するという参加の仕方があります。その人を仲間と呼ぶだけでは法的な地位が決まりません。法人設立後に人を迎える計画を立てるときは、どの権利と責任を持つ参加者を増やすのかを明確にします。

株式会社で株式を持つ人が増える場合には、既存株主からの譲渡なのか、会社が新たに株式を発行するのかでも確認点が異なります。譲渡制限がある株式では、会社側の承認に関する規定を見ます。詳細な発行手順はここでは扱いませんが、法人格を選ぶ際には、将来の資金提供者がどの方法で参加する構想かを考えます。

合同会社の社員の加入については、会社法第604条が定款変更や出資の履行との関係を定めています。既存の社員の仲間に入ると口頭で決めただけで、当然に法律上の社員となるとは限りません。法人設立時だけでなく、新たな参加の際にも、必要な同意と手続きを確認する必要があります。

新しい人の参加は、先にいた二人の相対的な権限にも影響する可能性があります。三人になれば、二人のときには起きなかった多数決の組合せが生まれます。会社の法人格を変えなくても、参加者が変わることで実際の意思決定のあり方が変化する点を想定しておきます。

採用候補者へ将来の出資や役員就任を約束する場合は、現在の経営者だけで確実に実現できる内容かを確認してください。必要な会社の決定が残る約束を、本人が確定した権利と受け取ると問題になります。法人設立前後の説明は、現在の立場と将来検討する事項を分け、記録を残すことが大切です。

参加条件の確認項目

求める仕事、出資の有無、議決への参加、利益の扱い、参加を決める機関を明らかにします。肩書だけで参加条件を伝えないようにしてください。

出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅵ離れるときに、出資者の地位まで消えるとは限らない

仕事を辞めることと、株式・持分を手放すこと

共同創業者が日常の仕事をやめたいと申し出た場合、その人がどの地位から離れるのかを確認します。取締役を退任することと株式を譲渡することは別です。法人設立に協力した人が働かなくなったから、株主としての権利も当然になくなるという理解はできません。

合同会社でも、業務執行から離れること、社員として退社すること、持分を譲渡することを区別して検討します。会社法第585条は持分譲渡を、第611条は退社に伴う払戻しを規定しています。どの制度の話なのかを曖昧にすると、会社側と離れる人の双方が予想していなかった金銭の問題を抱えることがあります。

出資額をそのままいつでも返してもらえるという約束を、仕組みの確認なしに置かないようにします。退社の時点の財産状況や、法令上の制限などの検討が必要です。法人格を選ぶ段階では、資金を出す入口だけでなく、参加者が離れる場合に会社の資金へどのような影響があるかも考えます。

死亡など、本人の希望とは異なる事情で参加関係が変わる場合もあります。持分会社では会社法第607条に法定退社の規定があり、第608条には相続等の特則があります。家族が自動的に同じ立場を引き継ぐと思い込まず、定款の定めと法律の関係を相談してください。事業承継の詳細は事情に応じた検討が必要です。

こうした話をすると関係が悪くなるのではと心配する人もいるでしょう。しかし、離脱の話は相手を疑うためではなく、生活や健康などの変化が起きたときに選択肢を持つためのものです。法人設立の時点で、まず相談する相手と、必要な資料を確認する手続きを決めておくだけでも役立ちます。

共同創業者の離脱を整理する順序
図:共同創業者の離脱を整理する順序

出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅶ定款と別の合意書を、矛盾したまま置かない

約束をどこへ記すかも、設計の一部
約束をどこへ記すかも、設計の一部

共同事業では、定款とは別に、創業者同士の約束を書面にすることがあります。そこに何を書いても会社法や定款を上書きできるわけではありません。法人設立の準備では、会社の組織として定める事項と、当事者間で契約する事項を分け、相互に矛盾していないかを確かめます。

合同会社などの定款変更について会社法第637条は、定款に別段の定めがなければ総社員の同意によるとしています。日常の業務の多数決と同じ方法で何でも変更できるとは限りません。設立時に決めた条件を後から調整したい場合の合意方法も、法人格を選ぶ時点で重要な確認点になります。

株式会社でも、株主間の約束だけで必要な株主総会の決議などを省略できると考えないようにします。実現したい内容を専門家へ説明するときは、「お互いに納得している」だけでなく、どの場面でどの権利を使いたいかまで伝えます。制度上の決定と当事者間の義務を区別することで、実行できる合意に近づきます。

資料の版の管理も必要です。法人設立の打合せ中に作った古いメモと、認証や登記の前提にした最終定款、後から交わした合意が混ざると、現在のルールが分からなくなります。いつ誰がどの方法で決めた文書かが確認できる状態にし、変更の際には関係する資料を一緒に見直します。

形式を整えることが目的なのではありません。出資者、経営者、将来の参加者が同じ説明を受けられることが重要です。法人設立時の話合いの経緯も、必要な範囲で記録しておくと、後から条項の意味を確認する際の助けになります。ただし、曖昧な口頭説明に頼らず、最終的な合意そのものを明確にしてください。

出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

標本 Ⅷまとめ|共同事業の将来を、会社の選択に反映する

今の合意と、変化したときの決め方を用意
今の合意と、変化したときの決め方を用意

共同事業での法人設立では、出資額を決めるだけでは足りません。仕事の対価、意思決定、代表権、新しい人の参加、離脱の条件まで考えると、株式会社と合同会社の違いが具体的になります。どちらの法人格が常に優れているという結論ではなく、自分たちの関係を適法に設計できる形を選んでください。

利益を構成員へ分配すること自体を予定していない活動なら、会社以外の制度も検討の余地があります。法人格の種類一覧で他の選択肢を確認し、活動の目的と参加者の期待が合っているかを確かめましょう。仲間という呼び方は同じでも、制度上の構成員の意味は法人により異なります。

法人設立の最終判断の前に、「意見が割れた」「一人の仕事量が変わった」「新しい人が加わる」「一人が離れる」という四つの場面を話し合ってみてください。答えが出ない項目は、隠したまま手続きを進めず、専門家へ確認する論点にします。変化に対応する合意があることは、目の前の事業へ安心して取り組む基礎になります。

創業メンバーそれぞれが、期待する収入と担う仕事、将来の参加期間を書いてみましょう。その違いをもとに、株式・持分・定款・契約のどこで調整するかを相談してください。

出典会社法|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)

他にもこのようなサイトで検索されていますので、ぜひ見てください

この記事のテーマと「法人設立」「法人格」「手続き」で検索して見つかったページです。掲載順は優劣を示すものではありません。内容の更新は各サイトが行うため、最新の情報は掲載元でご確認ください。

coconala.com

ココナラビジネスマガジン「法人の種類を一覧でわかりやすく」

法人の種類を一覧で示し、株式会社と合同会社の違いを詳しく比べた記事

法務省:合同会社の設立手続について合同会社の定款・社員・登記の制度を確認する公式案内。
地域運営組織の法人化ガイド|内閣官房
地域運営での会社形態の利用を扱う法人化ガイド。作成年の制度に注意して参照。
chisou.go.jp
会社の所有と経営の関係を考えるための解説。
会社設立時における法律の予備知識|専⾨家による補助⾦・助成⾦などの解説や経営に役⽴つノウハウ・ツールをご紹介|日本政策金融公庫

福岡商工会議所/Fukunet/経済 経営 ビジネス情報|事業形態(個人事業主・法人)

事業形態の選択について商工会議所が案内しています。

fukunet.or.jp を開く
法Navi第14号 会社編|埼玉司法書士会司法書士会が株式会社と合同会社を比較する情報誌。

株式会社と合同会社の比較資料|ビジネス会計人クラブ会社制度の違いを整理する事業者向け研修資料。

この記事は参考になりましたか?

読んだ感想を、次の編集の参考にします。