SPECIMEN LABELNo.034
- 対象の法人格
- 一般社団法人
- 根拠法
- 一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(第10条〜第22条・第60条・第301条ほか)
- 所管
- 法務局(主たる事務所の所在地を管轄する登記所)
- 設立の方式
- 準則主義(登記で成立)・公証人の定款認証あり
一般社団法人の法人設立に必要な要件|社員・理事・定款・登記の4点を条文で確かめる

この標本ページの読者
- 仲間と始めた活動や業界の集まりを、一般社団法人として法人化しようと考えている人
- 「一般社団法人は簡単に作れる」と聞いたが、実際の要件を条文で確かめておきたい人
- 社員と理事の違い、理事会を置くかどうかで何が変わるのかを整理したい人
一般社団法人は、株式会社と同じく所轄庁の許認可がいらない法人格です。そのため手軽な法人設立の手段として紹介されることが多いのですが、要件がないわけではありません。人・定款・認証・登記のそれぞれに、法律が決めた条件があります。この記事では、一般社団法人の法人設立に必要な要件を4つの段階に分け、条文の言葉に沿って一つずつ確かめます。
なお、ここで扱うのは一般社団法人という法人格を得るまでの要件です。法人設立のあとに税務署や自治体へ出す届出は姉妹サイト(設立後の手続き)の担当なので、この記事では触れる程度にとどめます。
標本 Ⅰ一般社団法人という法人格|根拠法・所管・設立の方式

一般社団法人の根拠法は、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律です。この法律の第22条は「一般社団法人は、その主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定めています。所轄庁が中身を審査して認める仕組みではなく、法律の要件を満たした団体が登記をすれば法人格を得られる準則主義の法人格です。
手続きの窓口は、主たる事務所の所在地を管轄する法務局です。NPO法人のような所轄庁の認証や、社会福祉法人のような認可の手続きはありません。その代わり、定款は公証人の認証を受けなければ効力を生じないと第13条が定めています。法人設立の流れは、定款の作成、公証人の認証、設立時理事の選任と調査、登記の申請という順番で進みます。

要件はこの4つに分けて考える
①人(設立時社員と理事)、②定款(必ず書く事項と書いても無効な定め)、③認証と調査、④登記の期限と窓口。この順に満たしていけば、法人格を得るまでの手続きに抜けが出にくくなります。
一般社団法人の法人設立は、所轄庁の審査がない分、手続きの進み具合を自分たちで管理することになります。どの書類をいつまでに整えるかは、上の順番に沿って逆算すると組み立てやすくなります。
出典一般社団法人及び一般財団法人に関する法律|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)
標本 Ⅱ要件①設立時社員は2人以上|法人も社員になれる

一般社団法人は人の集まりに法人格を与えるものなので、まず「社員」が必要です。ここでいう社員は従業員のことではなく、法人の構成員として社員総会で議決権を持つ人を指します。第10条は、設立時社員が共同して定款を作成し、その全員が署名または記名押印すると定めています。
条文自体は「共同して」と書くだけで人数の数字は出てきませんが、法務省の一般社団法人及び一般財団法人制度Q&Aは、設立に当たっては2人以上の社員が必要だと明記しています。1人では法人設立ができない点が、1人で設立できる株式会社・合同会社との大きな違いです。
設立に当たっては,2人以上の社員が必要です。
同じQ&Aによると、法人も一般社団法人の社員になることができます。ただし、法人の支店・支部・営業所のように従たる事務所の性質を持つものは社員になれません。業界団体のように会社どうしが集まって一般社団法人をつくる場合は、この点を確かめておきます。
設立後に社員が1人になっても、それだけで解散することはありません。第148条が解散の事由として挙げているのは「社員が欠けたこと」、つまり社員が0人になった場合です。設立の要件と存続の条件は別だと覚えておくと混乱しません。名前だけを借りて2人目の社員にする、いわゆる名義貸しで人数をそろえる法人設立は、後で社員総会の運営やトラブルの原因になりかねないので勧められません。人数の考え方は人数 1人 2人の分類でも比べています。
出典一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A(法務省・確認日 2026年10月11日)
標本 Ⅲ要件②理事は1人以上|理事会を置くなら3人と監事

一般社団法人の業務を執行するのが理事です。第60条は「一般社団法人には、一人又は二人以上の理事を置かなければならない」と定めているので、最低限の構成は理事1人です。理事は社員が兼ねてもかまいません。社員2人のうち1人が理事を兼ねる形でも、法律上の要件は満たします。
人数が増えるのは、定款で理事会を置くと決めた場合です。理事会を置く一般社団法人では設立時理事は3人以上でなければならず、第61条により監事も置く必要があります。会計監査人を置く場合も監事が必要です。どの機関を置くかで、法人設立のときに集める人数が変わります。

監事を置く場合は、人数だけでなく役割の兼任にも注意します。第65条第2項により、監事はその一般社団法人や子法人の理事・使用人を兼ねられません。理事と監事の欄に同じ人の名前を書いて頭数を満たすことはできないため、候補者の名簿には担当する役割も添えて確認してください。社員の人数と役員の人数は別々の要件として数えることが大切です。
理事会を置くかどうかは、法人の規模や意思決定のしかたで選びます。小さな団体が形だけ理事会を置くと、理事会の開催や議事録の作成といった運営の手続きが増えます。反対に、外部から理事を迎える団体では理事会があるほうが運営しやすいこともあります。詳しい比較は一般社団法人 理事 人数の分類で扱います。
役員になれない人の定めもあります。一般社団法人及び一般財団法人に関する法律には理事・監事の資格に関する規定があり、法人は理事になれません。法人設立の前に、理事の候補者が欠格事由に当たらないかを条文で確かめておくと安心です。欠格事由の全体像は条件 要件 誰でもの分類で扱います。
出典一般社団法人及び一般財団法人に関する法律|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)
標本 Ⅳ要件③定款に必ず書く7つの事項と、書いても無効になる定め

定款は法人の基本ルールです。第11条第1項は、一般社団法人の定款に必ず記載・記録しなければならない事項を7つ挙げています。どれか1つでも欠けると定款として成り立たないので、法人設立の準備では最初に確認する項目です。
- 目的
- 名称
- 主たる事務所の所在地
- 設立時社員の氏名又は名称及び住所
- 社員の資格の得喪に関する規定
- 公告方法
- 事業年度
一方で、書いても効力を持たない定めもあります。第11条第2項は、社員に剰余金または残余財産の分配を受ける権利を与える旨の定款の定めは効力を有しないとしています。利益を構成員に配ることを前提にした事業なら、一般社団法人という法人格はそもそも合いません。この点は一般社団法人と株式会社の選び方で詳しく比べます。

日本公証人連合会は、小規模な一般社団法人向けの定款記載例を公開しています。記載例はそのまま使うものではなく、自分たちの活動に合わせて書き換える前提の見本です。目的の書き方や社員の入退社の規定は、団体ごとに違って当然です。
定款には、必ず書く事項のほかに、書いておけば効力を持つ事項や、法律に反しない範囲で自由に書ける事項もあります。理事の任期や社員総会の招集の方法などがその例です。法人設立のあとで定款を変えるには社員総会の決議が要るので、最初の定款で運営の形をよく考えておくことが、結果的に手続きを減らします。
出典一般社団法人の定款記載例1(小規模な一般社団法人)(日本公証人連合会・確認日 2026年10月11日)
標本 Ⅴ要件④公証人の認証と、設立時理事の選任・調査

作成した定款は、公証人の認証を受けてはじめて効力を持ちます(第13条)。株式会社と同じく、一般社団法人の法人設立では避けて通れない手続きです。合同会社やNPO法人のように定款認証が不要な法人格と比べると、ここに一手間が加わります。
定款で設立時理事を定めていなかった場合、設立時社員は公証人の認証の後遅滞なく設立時理事を選任しなければなりません(第15条)。監事を置く法人なら、設立時監事も選びます。選ばれた設立時理事(監事を置く場合は監事も)は、選任後遅滞なく、設立の手続きが法令や定款に違反していないかを調査します(第20条)。
定款認証
公証人が定款の内容と作成の手続きを確かめる。認証がなければ定款は効力を生じない
設立時理事の選任
定款で決めていなければ、認証の後に設立時社員が選ぶ
設立時理事の調査
設立の手続きが法令・定款に違反していないかを調べる
設立時代表理事
理事会を置く場合は、設立時理事の中から選定する
この調査は形式的な儀式ではなく、登記の期限の起点にもなります。いつ調査を終えたのかを記録しておくと、次の登記の段取りがはっきりします。
第20条第2項は、調査で法令・定款への違反や不当な事項を認めたとき、設立時理事が設立時社員へ通知することも定めています。認証済みの定款があるという理由だけで、その後の選任や準備まで問題がないと決めつけることはできません。誰がどの事項を確かめ、気づいた点を誰に伝えるかを、設立時社員と役員候補の間で共有しておきましょう。
公証役場での定款認証は、事前に原案を送って内容を確かめてもらう進め方が一般的です。法人設立の日程を決めるときは、認証の予約から登記の申請までをひと続きの予定として組んでおくと、2週間の期限に追われずに済みます。
出典一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A(法務省・確認日 2026年10月11日)
標本 Ⅵ登記の期限と窓口|2週間以内に主たる事務所の所在地で

最後の要件が設立の登記です。第301条は、一般社団法人の設立の登記を、主たる事務所の所在地において、設立時理事等の調査が終了した日と設立時社員が定めた日のいずれか遅い日から2週間以内にしなければならないと定めています。登記をした日に法人格が生まれ、その日が法人の成立日になります。

登記申請書の様式と記載例は、法務局の「商業・法人登記の申請書様式」のページで公開されています。登記ではそのほか、目的・名称・事務所の所在場所・理事の氏名などが登記事項になります。申請書の書き方や添付書類の通数は、姉妹サイト(必要書類)の担当なので、ここでは期限と窓口の確認にとどめます。
登記はオンラインでも申請できます。法人設立ワンストップサービスやマイナポータルを使える範囲は法人格によって違うため、一般社団法人で何がオンラインで済むのかはワンストップサービスの分類で確かめてください。
注意登記にかかる登録免許税や公証人の手数料は、法人格によって扱いが違います。金額は確認日つきで費用 法人の種類別の分類にまとめます。古い記事の金額をそのまま使わないでください。
出典商業・法人登記の申請書様式(法務局・確認日 2026年10月11日)
標本 Ⅶ要件にないもの|財産・事業の分野・所轄庁の審査

一般社団法人の要件を確かめると、「求められていないもの」も見えてきます。一つは財産です。一般財団法人には拠出財産300万円以上という下限がありますが、一般社団法人には設立時の財産の下限がありません。資本金という仕組みもありません。
もう一つは事業の分野です。NPO法人は法律の別表に掲げる20の分野に当てはまる必要がありますが、一般社団法人の目的には、そのような分野の限定がありません。営利の事業を行うことも法律上は可能で、ただ利益を社員に分配できないという制約がかかります。
所轄庁の審査がないことも、要件にないものの一つです。NPO法人なら所轄庁が申請書を受け付けて縦覧や認証の手続きを進めますが、一般社団法人では、法人格を取得する際に活動の公益性を認定してもらう仕組みはありません。法人設立の登記と、個々の事業に必要な許認可は分けて確認します。そのぶん、社会的な信用は法人格の名前だけでなく、定款や役員の顔ぶれ、活動の実績で示していくことになります。
- 財産の下限
- なし(一般財団法人は300万円以上)
- 事業の分野
- 法律上の限定なし(NPO法人は20分野)
- 所轄庁の審査
- なし(登記で成立する準則主義)
- 利益の分配
- 社員に分配する定めは無効
ただし、要件が少ないことは「どんな団体にも向いている」という意味ではありません。たとえば税制では、非営利型法人の要件を満たすかどうかで法人税の扱いが変わり、その要件は定款の書き方や理事の構成に関わります。法人設立の段階で税の扱いまで見通したい場合は、一般社団法人 非営利型 税金の分類と、国税庁の資料、税理士への相談で確かめてください。
出典一般社団法人及び一般財団法人に関する法律|e-Gov法令検索(デジタル庁 e-Gov・確認日 2026年10月11日)
標本 Ⅷまとめ|一般社団法人の要件は「2人・1人・7項目・2週間」で覚える

一般社団法人の法人設立に必要な要件を、もう一度短くまとめます。設立時社員は2人以上、理事は1人以上(理事会を置くなら3人以上と監事)、定款には7つの事項を必ず書き、公証人の認証を受け、設立時理事の調査を経て、2週間以内に主たる事務所の所在地で登記をします。所轄庁の審査がない分、要件を自分たちで確かめる責任があります。
- 設立時社員を2人以上集め、誰が理事になるかを決める
- 理事会と監事を置くかを決め、必要な人数をそろえる
- 7つの必要事項を入れて定款を作り、公証人の認証を受ける
- 設立時理事が手続きを調査し、2週間以内に登記を申請する
条文と法務省のQ&Aで確かめた内容は以上ですが、個別の団体で迷う点は必ず出てきます。定款の書き方や登記の申請は司法書士、税の扱いは税理士に相談するのが確実です。法人格そのものを選び直したくなったら、法人格の種類 一覧に戻って他の法人格と並べてみてください。
要件の数字は、条文の改正や運用の変化で変わることがあります。この記事の確認日は2026年10月11日です。法人設立の手続きに入る直前には、法務局と公証役場の案内をもう一度見て、最新の扱いになっているかを確かめてください。
要件を一つずつ確かめてみると、一般社団法人は「簡単」というより「審査がない分、自分たちで整える」法人格だと分かります。社員の顔ぶれと理事の人数が決まったら、定款の記載例を手元に置いて、団体の言葉で目的を書き出すところから始めてみてください。
出典一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A(法務省・確認日 2026年10月11日)
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